サロン事故で泥沼裁判
賠償請求額はいくら?
- 実際の裁判から学ぶリスクと備え -
ペットサロンは、大切な家族であるペットの美と健康を託す場所。しかし、悲しいことに、トリミング中の事故や予期せぬトラブルが後を絶たず、裁判沙汰に発展するケースも少なくありません。もし、あなたのサロンで同じような事態が起きたら…?
本稿では、実際にあった裁判例を元に、サロン事故における賠償請求額の実態を分析し、ペット事業者としてのリスクと、今すぐできる備えについて考察します。

裁判例から見る「もしも」の賠償請求額
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ケース1:ハサミで負傷させ死亡させた事故
大阪府内のペットサロンで、トリミング中にトリマーがハサミでトイプードルを負傷させ、死亡させてしまったという痛ましい事故。この裁判では、飼い主がサロン経営者に対し、慰謝料や葬儀費用など約350万円の損害賠償を求めました。判決では、トリマーの過失が認められ、約40万円の賠償が命じられています。
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ケース2:トリミング台からの落下事故
大阪市内のペットサロンで、トリミング中にトリミング台からトイプードルが落下し、骨折したという事故。飼い主がサロン側を訴え、裁判所の提示した示談案により、サロン側が約45万円を支払うことで和解が成立しました。当初、飼い主は100万円の賠償を求めていたことから、落下事故でも高額な請求が行われる可能性があることがわかります。
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ケース3:SNS投稿による信用毀損
福岡市内のペットサロンで、施術内容を巡って顧客とトラブルになり、顧客がSNSに不適切な内容を投稿。サロン側が名誉棄損として訴訟を起こした結果、一部の投稿が違法と認められ、顧客に22万円の支払いが命じられました。直接的な事故ではないものの、SNSでの風評被害も大きなリスクとなり、損害賠償の対象となることが示唆されます。
裁判例から読み解くリスクの本質
これらの裁判例から、以下のリスクが浮き彫りになります。
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高額な賠償請求: 死亡事故や後遺症が残るような事故の場合、数百万円単位の高額な賠償金を請求される可能性があります。
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裁判の長期化: 裁判は長期化するケースが多く、精神的、経済的な負担が非常に大きくなります。
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風評被害: SNSの普及により、顧客とのトラブルが瞬時に拡散され、サロンの信用を大きく損なう可能性があります。
「他人事」ではない、現実のリスク
私自身、日本ペット事業者支援協会の電話相談窓口で、事故後のご相談を数多く受けてきました。
「とても仲良くしていたお客様だったのに…」 「長年可愛がり、お預かりしていた子なのに…」
長年築き上げてきた信頼関係が一瞬で崩れ去り、訴訟に発展するケースは、決して珍しくありません。
「お金は払えない。もう廃業を考えている。」 「精神的に耐えられない。」
悲痛な声を聞く度に、胸が痛みます。
サロンだけの責任なのか?
もちろん、サロン側には安全管理の徹底や適切な施術を行う責任があります。しかし、時に一方的にサロンだけに責任を押し付けられるケースもあり、納得できない思いを抱える事業者の方も少なくありません。
私たち日本ペット事業者支援協会の使命
私たち日本ペット事業者支援協会は、「1人でも多くのペット事業者を守ること」を使命としています。今回のコラムでは、実際の裁判例を通して、ペットサロン経営におけるリスクの現実を伝え、万が一の事態に備えることの重要性を強く訴えかけます。